完全に方向性を間違えた「ENGEIグランドスラム」
9月29日「ENGEIグランドスラムLIVE」が放送された。
2015年から開始している番組で初の生放送だったが、完全に「失敗」だと思う。
まず、ゲストが要らない。
最近のバラエティでは俳優が呼ばれるケースか多い。視聴者率稼ぎだったり番宣だったりと理由は多々あるが、なぜ今回そのような形を取ったのかといえば「セッティングの時間稼ぎが必要だったから」
漫才だけなら未だしもコントをやるとなればセットの準備が必要。生放送ではCM中にやるか誰かがトークで間を持たせるしかない。流石にMCの三人だけで何度も間を持たせるのはキツイものがある。
だから時間稼ぎができる人を置かなければならないのだ。
正直、いま現在のバラエティでよくある「この番組が大好きだという方々にお越しいただきました枠」が無いのがENGEIグランドスラムの魅力のひとつで、シンプルな作りが特徴だったのに、「LIVE」が余計な材料になってしまった。
あとは昨今のバラエティで問題視されてる「客の質」これが最悪だった。
キングオブコントのお客さんは良かった。
「ザ・ギース」のサイコメトラーでは犯人が刑事だったと判明すれば「ざわざわ・・・」となりそうだがそれも無く、「ハナコ」の2本目「カップル」で「キスして・・・」の場面だと「Fu〜」という奴がいそうなモノだか、それも無かった。お笑い賞レースとしては完璧なお客さんだった。
ただ残念ながらグランドスラムの客はそうでは無かった。
ナイツの下ネタで変な空気にして、(ナイツも悪いが)バイきんぐ西村の奇行に悲鳴を上げ(これは西村は悪くない)、視聴者としては「あーあ、このパターンの客か」と落胆した。
しかし、これを逆手に取り素晴らしいネタをしたコンビがいた。
「千原兄弟」である。
コンビでコントを披露するなんて何年振りなのだろうか。その千原兄弟が生放送でやったネタが「四十九日」
ドラマで主役も演じていたジュニアが息子を殺された父親を熱演。緊張と緩和の「緊張」を上手く引き出していた。
そして息子の話から雑学を披露し鈴を鳴らす。
舞台に用意された画面には「ホンマでっか?!TV」で使われている演出が。「緩和」の瞬間に会場は大爆笑に包まれた。(ホンマでっか?!TVを知らない人にはなんのこっちゃだが)
さらに刑事役のせいじに「知ってることあるでしょ」と振ってただただ雑学を披露するせいじに対し「話の流れで言え」と怒る。
まんまジュニアである。ジュニアが言いそうなことをネタに織り込んでいるのがまた笑える。
そしてネタの中で雑学を披露すると、客が「おおー」と感心する。
その後、なんとも言えない空気が漂う。その空気感でまた笑ってしまう。
この空気感を出すには感情移入が激しい客の方が容易だ。一々反応してくれるから、反応した後に「シリアスな場面で感心しちゃった変な空気」になり、その後可笑しさに笑いたくなってしまう。狙ってやっているかはわからないが素晴らしい空気だった。
さらに生放送という悪材料が好転した瞬間があった。
大阪で逃走していた樋田淳也容疑者が逮捕されるという報道が出た瞬間が、このネタ中だった。
「犯人を捕まえてくださいよ!」というコント中に犯人が捕まった。こんな奇跡を起こせる千原兄弟はまさに「持ってる」芸人だ。
完全に方向性を間違えた「ENGEIグランドスラム」だが、これだけは生放送でやった価値はあった。そう思える瞬間だった。